大島らしさとは何だろう?

ソーメン絞り

平成26年度より2年間にわたり取り組んでまいりました『小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業』ですが、平成27年度の事業満了をもちまして、一旦終止符を打つことといたしました。

事業目的と事業内容

事業目的

『東京から最短30分の風光明媚な火山島で展開する「温故知新」により見出した、途絶えていた郷土食・文化の継承より新しい観光素材の創出・継続・発展を目指す』

事業内容

①特産品「ゴマサバのアンチョビ(仮称 いっぴきちょびすけ)の商品化」

②観光「ソーメン絞りの復元と体験型メニュー構築」

目指したものと課題

この事業を通じて目指したものは、『連携』『地元の持つ魅力の引き上げ』そして、なにより『大島らしさとは』この言葉に尽きるような気がいたします。

近代化により利便性を増すとともに、失われゆく土地の個性。また、交通網の発達とともに、自由に旅先を選択できる現在。かつての観光地においては、発展と衰退の二極化が顕著のように思います。

ここ大島においても、決して大きくはない自治体でありながら、明確な地域ブランドが見出されぬままテーマの統一性もなく、形骸化・老朽化の中、低迷しているような印象を受けます。その中で自然だけが圧倒的な魅力を放っているように思います。

商工会といたしましても、新規事業に取り組むことにより、未来に続く何かを見出したかったのですが、時間、マンパワー、情熱の熱量、いろいろな不足事項とともに不完全燃焼で終了することとなりました。

今後について

しかしながら、大切なのは今後です。幸いこの事業で得た知識と経験はとても貴重なもので、今後にむけての体力を培った2年間でした。

短期・中期・長期目線において、ここ大島の商工会はどうあるべきか。悪しき慣習『例年どおり』からの脱却を目指さなければなりません。

そしてこの事業で取り組んだ二つのテーマも、商工会の『事業』としては一旦休止いたしますが、引き続き取り組んでまいります。

『いっぴきちょびすけ』こと『ゴマサバのアンチョビ』についてはあともう一歩。試作品をもって終了したのですが、実は評判が良かったりします。確かに、他地域の類似品と食べ比べても断然美味しいのです。大島が誇る『海塩』と『椿油』には圧倒的な力があります。

椿は捨てるとこなし!

そしてこの事業を通じて、改めて思い知ることとなった素材としての椿の魅力。
ソーメン絞りの復元の際に取り組んでいた染料研究において、椿の葉の灰『椿灰』や藍建ての際に必要な『木灰』が現在では貴重となり入手困難であるということでした。

椿の花は『花びら染め』やジャムなどといった食用に、種子は『椿油』に、搾りかすは『肥料に』、間伐材で出た葉は『椿灰』に、枝は『椿炭』や『木灰』に。こんなにフル活用できる植物って珍しいのではないでしょうか。そして、この椿が名産であるこの大島を誇りに思いませんか?国際優秀椿園認定もあいまって、今がもっとアピールすべき時期の到来のように思うのです。

そして、もうひとつのテーマである『ソーメン絞り』ですが、こちらも機織り機での生地の再現まで進みました。
染料である藍の育成と染料の試作もおこない、今年も引き続き改良を目指し取り組んでいきます。大島女性の必需品であった『手ぬぐい』は今の時代にも十分魅力ある素材であると考えます。

時の流れとともに消えゆくものは、ある意味自然なことで致し方ないことなのかもしれません。利便性や効率性を追求し熟してきた現代。皮肉ながら過渡期を迎え、いささか疲労している今の時代においては、失われてしまった『素朴な美しさ』こそ、かつての日本の日本らしい美しさであるのかもしれません。

八丈島で学んだ言葉

最後に、この事業において学んだ貴重な言葉があります。それは『足るを知る』です。
これは、八丈島において黄八丈の染元・織元である『めゆ工房』の山下誉氏より教わった言葉です。

江戸時代に他の地域では当たり前だった藍染が八丈島にはなかった。赤の染料もなかった。黄八丈の三色は、島の自然が与えてくれたものであり、自然と寄り添い、多くを求めず島にあるもので作り上げていき、厳しい上納品の基準を満たすべく磨き上げられたからこそ、現代においても輝き続ける本物の美しさであると思うのです。

この考えは、現在の観光のありかたを振り返るとともに、大島において見つめなおすべき根本的な考えのように思いました。培った経験とこの言葉を胸に。

この二年間。この事業を通じていろいろな出会いがありました。携わってくださった皆さま、関心を持って下さった皆様へ心より感謝申し上げます。