1.事業名
『途絶えていた郷土食・文化を継承した特産品開発プロジェクト』
2.目的
東京から最短30分の風光明媚な火山島で展開する、「温故知新」により見出した、途絶えていた郷土食・文化の継承より新しい観光素材の創出・継続・発展を目指す。
3.背景
東京都大島町は東京の南南西120kmに位置し、東京・竹芝桟橋から1時間45分、航空機利用では約30分と、首都圏に最も近い離島として恵まれた立地条件にあり、昭和39年に富士箱根伊豆国立公園に編入、また、平成21年9月には日本ジオパークに認定され、雄大な自然を生かした海洋性自然公園として、首都圏に最も近いリフレッシュ・リゾートとして親しまれている。また、大島町の花であるとともに、暮らしを支えてきた伝統産業である『やぶ椿』は全島いたるところで見られ、その数300万本といわれている。
しかしながら、ジオパークに関して、平成27年2月に行われた再認定審査において“条件付き再認定”という結果に終わった。正式な再認定の結果に至らなかった理由として「情報整備」「PR」「地域への浸透」「商品開発」といった取り組みに関する指摘を受けた。これはそのまま現在の大島が広く抱える課題であると同時に、早急な解決が望まれる。幸い平成26年に実施した本事業における調査・研究事業から大島町商工会への注目と関係機関の連携が生まれ、協力の上効果的に取り組む体制が生まれてきた。
大島町商工会では平成26年度より、この事業を活用して、伊豆大島の地域資源を発掘、整理、磨きなおすとともに、他の地域の先進事例を研究、参考にすることで“伊豆大島らしさ”を持った新たな事業を見出すべく、調査研究事業を進めてきた。
4.実施機関
大島町商工会
この事業は、地域の小規模事業者が地域の資源を活用して、全国規模のマーケットを視野に入れた新事業展開を支援するため、商工会・都道府県商工会連合会・商工会議所が小規模事業者等と協力して行う特産品開発や観光開発などの取組に対し幅広い支援を行う、『平成27年度小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業』を活用し実施した。
5.実施期間
平成27年6月~平成28年2月
6.実施体制図
7.事業内容
◆特産品開発事業「ゴマサバのアンチョビ(仮称:いっぴきちょびすけ)の商品化」
平成26年度に実施した『地域力活用新事業∞全国展開支援事業 調査研究事業』において再認識した地域資源をもとに、大島らしい『食のPRメニュー』を開発していくことを目指した。
平成27年度においても同事業の採択結果を受け、前年度の試作品の中において好評であった、『ゴマサバのアンチョビ』について着目。ゴマサバは大島においては市場価値が低い未利用魚であるが、加工度をあげ付加価値を高めることで新たな利益を生める素材であることを再確認。また、その製造工程は伊豆大島の郷土料理『いっぴきじょっから』に類似するものがあり、大島の特産品である椿油、海塩を合わせることで『大島らしさ』を表現できる特産品として『いっぴきちょびすけ』というネーミングとし事業に取り組んだ。
◆PRツール制作および広報
①キャラクター・ロゴの作成
ロゴタイプは、島の素朴な情景や手づくり感を表現するとともに、花彩島と称えられる程、多くの花が咲き誇る島の情景をイメージしたデザインとなっている。イラストについても、手描き感のある、愛着のあるイメージを得意とするイラストレーターに制作依頼し、商品に使用している“ごま鯖”をキャラクター化することで、目にする人に愛着を与えるとともに、アイキャッチ効果を高めるねらいがある。
②Facebookページの開設
本事業の取り組みをリアルタイム且つ多くの方に周知することを目的にFacebookページを開設、情報発信を行った。
Facebookページへ
③PRツール作成
パンフレット・のぼり旗・ポスター・リーフレット
④メディアへの掲載
『ぐるなび通信 2016年2月号 発行:株式会社ぐるなび』
◆観光開発事業「ソーメン絞りの復元と体験型メニュー構築」
昨年この事業を通じて取り組んだ「昭和初期の古き良き伊豆大島から探る観光資源開発調査研究事業」は、事業年度内に実現可能なプランニングまでには至らなかったが、住民への興味喚起を狙い新聞折込にてPRしていたこの事業の概要から、大島の持つ地域資源及び文化について、会員の枠を超えた一般住民からポジティブな反応が数多く寄せられていた。
今年度はその中から発掘された、事業化に向けて有効であるとともに実現可能なプランであり、昨年度事業の中で行った観光アンケートの不満事項(雨天時のメニュー不足)の解消に資すると思われる事業を試みた。この事業を有効活用し、次年度以降で実現を目指す体験型メニューの事業化に向けて、機織りの習得と人材育成、メニューの構築に取り組むことを目標とした。
「ソーメン絞り」「機織り」という温故知新の素材により、風化が進む大島独自の文化・風俗の見直しのきっかけを目指し、また、「衣・食・住」という取り組みやすいテーマとすることで、世代間交流、地域住民と来訪者との交流、文化・伝承の交流をすすめながら、「生活文化消費型」の観光スタイルを研究するにより、住民が地域の文化・風土・歴史を見直し、自然を活かした「享楽型」の観光とともに、近年あいまいになっている「大島らしさ」を見つけ出し、身近なことから地域に誇りを持つきっかけを生み出す効果が予想される。
事業化に至った暁には、不足がちな雨天時の観光メニューのひとつとなり、独自性をもった「ここにしかない」体験の提供をめざす。また、のちに控えるオリンピックも視野に入れ、特に外国人をターゲットとした時に、日本らしい文化メニューを磨くことは有効であると考え取り組みを行った。
ソーメン絞りの染料である、「タデ藍」の栽培を行い、椿の間伐材等の遊休資源を利用した染料の研究にも取り組んだ。